• 8月 7, 2026
  • 8月 19, 2026

災害時に急増する「災害関連死」を防ぐために|主要なリスクと命を守る対策

 令和8年7月28日に発生した「令和8年熊本地震」により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。また、この厳しい暑さの中で熱中症やエコノミークラス症候群などにより命を落とされた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、ご遺族の皆様に深くお悔やみ申し上げます。

 現在、南海トラフ地震や首都直下型地震、日本海溝・千島海溝周辺地震など、日本のどこにいてもいつ大規模な震災に見舞われるかわからない状況が続いています。

 大規模な災害時には、避難生活に伴う強いストレスや環境の激変によって、持病の悪化や新たな急性疾患の発症リスクが急激に高まります。

 特に「災害高血圧」「パニック障害(急性ストレス反応)」「熱中症」「エコノミークラス症候群」の4つは、被災地で多発する「災害関連死」に直結する非常に重要な医療課題です。それぞれの特徴と、命を守るための具体的な対策をまとめました。

1. 災害高血圧

 強いストレスや寒暖差、支援物資の塩分(カップ麺や保存食など)の過剰摂取により、血圧が異常上昇する現象です。放置すると脳卒中や心筋梗塞を引き起こすリスクが高まります。

•食事の減塩: 支援物資のスープや汁物は残すなど、可能な限り塩分を控える。
•服薬の継続: 持病のある方は自己判断で中断せず、救護所や医療スタッフに相談して薬を確保・継続する。
•血圧の測定: 定期的に測定し、140/90mmHg 以上が続く場合は早めに救護所へ相談する。

2. パニック障害(急性心理ストレス)

 激しい揺れや余震への恐怖、避難環境の変化に伴う強い不安から、過換気や激しい動悸などのパニック発作を起こしやすくなります。

 •環境の確保: 発作が起きたら、段ボールベッドの陰など横になれる静かなスペースへ移動し、医療チームを頼る。
 •腹式呼吸: 「吸う1:吐く2」の割合を意識し、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。
 •お薬手帳と持参薬の携帯: かかつけ医の頓服薬(抗不安薬など)がある場合は、お薬手帳と一緒に常に携行する。

3. 熱中症

 停電時や空調のない避難所・車中泊、炎天下での作業でリスクが最大化します。避難所ではトイレを気にして水分補給を我慢する人が多く、脱水から熱中症がドミノ倒しのように発生します。

 •こまめな給水: 喉が渇いていなくても、時間を決めて水分・塩分を補給する。
 •物理的な冷却: うちわ、濡れタオル、ネッククーラーなどを活用し、体温を下げる。
 •周囲の掛け声: 高齢者や子どもは暑さを自覚しにくいため、周りが積極的に声をかける。

4. エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)

 水分不足の状態で、車中泊や狭い避難スペースで長時間同じ姿勢を続けると、足の静脈に血栓ができます。歩行時などに血栓が肺へ流れて詰まると、突然死を招く非常に危険な疾患です。

 •定期的な運動: 1〜2時間おきに足の指を曲げ伸ばす、かかとを上下させるなどのストレッチを行う。
 •適切な水分補給: アルコールやコーヒーなどのカフェインを避け、水やお茶で血液の濃縮を防ぐ。
 •着圧ストッキングの活用: 高齢者、妊婦、過去に血栓歴のある方は、厚生労働省も推奨する「弾性ストッキング」を着用する。就寝時は足を少し高く保つ。

5. その他の重要な医療リスク

◆避難場所での食中毒

 密閉・密集した環境や衛生設備が限られる状況では、感染症や食中毒が発生しやすくなります。予防の原則は「つけない・増やさない・やっつける」です。



◆下痢止めの使用に関する注意

 被災地で下痢を生じた際、自己判断で下痢止めを服用すると体内から病原体や毒素が排出されにくくなる場合があります。水分補給を行いながら、速やかに救護所の医療チームにご相談ください。

◆クラッシュ症候群(挫滅症候群)

  家屋の下敷きなどから長時間後に救出された際、傷ついた筋肉から出た毒素が全身に回り、急性腎不全などを引き起こします。救出初期からの医療チーム(DMAT等)による適切な処置が必要です。

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引用文献・参考ガイドライン一覧

本文章で解説した医療リスクおよび対策は、以下の公的機関・学会のガイドラインや指針に基づいています。

1. 災害高血圧
o 日本高血圧学会 Disaster Hypertension Committee「災害時血圧管理マニュアル / 寒冷・災害時被災地における血圧管理の要点」
o 日本心臓病学会・日本循環器学会『災害時循環器病薬物療法ガイドライン』
2. パニック障害・心理ストレス
o 厚生労働省「災害時メンタルヘルス専門家マニュアル」
o 日本トラウマティック・ストレス学会「大規模災害後の精神科的支援ガイドライン」
3. 熱中症
o 環境省「熱中症環境保健マニュアル」 / 厚生労働省「避難所における熱中症予防の手引き」
o 日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン」
4. エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)
o 厚生労働省「避難所生活等における肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)の予防について」
o 日本肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症学会・日本心臓病学会『肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン』
5. 食中毒・感染症
o 厚生労働省「避難所・炊き出し等における食中毒予防マニュアル」
o 国立感染症研究所「避難所における感染症対策ガイドライン」
6. クラッシュ症候群
o 日本災害医学会・日本救急医学会「挫滅症候群(クラッシュ症候群)初期診療ガイドライン」

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