- 8月 10, 2026
- 8月 19, 2026
【もしもに備える】災害時も安心!がん治療・緩和ケア・透析・ストマ(人工肛門/人工膀胱)を利用される方とご家族のための防災ガイド
地震や風水害などの大きな災害は、いつ起こるか分かりません。 特にがんの治療中や緩和ケア、人工透析を受けている方、ストマ(人工肛門・人工膀胱)を使用しているオストメイトの方やご家族にとっては、「もし災害が起きたら、治療や手入れはどうなるんだろう…」という不安が大きいのではないでしょうか。
今回は、平時からの「備え」と、万が一被災したときの「具体的な対応策」を分かりやすくまとめました。自分と家族の大切なからだを守るために、ぜひ参考にしてください。
Part 1:平時からの準備(災害が起きる前の備え)
災害が起きると、固定電話が繋がりにくくなったり、停電や断水が発生したりします。日頃から以下の準備を進めておきましょう。
1. 情報・通信手段の確保
•連絡ツールの準備: 携帯電話のインターネットやメール、SNS(LINEなど)のメッセージ機能は、固定電話より早く繋がることが多いです。
•充電器の準備: 停電に備え、乾電池式、手回し式、ソーラー式、モバイルバッテリーなどの充電ツールを準備しておきましょう。
2. 「自分のからだの情報」をノートやアプリに残す
普段通っている医療機関が被災して受診できない場合に備え、自分の病状や治療に関する情報をまとめておきます。
•準備するもの: お薬手帳、緊急医療手帳、身体障害者手帳(該当の方)
•書いておくこと・把握しておくこと:
-飲んでいる薬(抗がん剤、痛み止めなど)、病名、アレルギーのある薬
-(抗がん剤治療中の方)抗がん剤の名前、前回の治療日、血液検査 Result
-(オストメイトの方)ストマ装具のメーカー名、製品名、品番、サイズ(穴の大きさ)
-(透析の方)透析方式(血液透析か腹膜透析か)、週間スケジュール、ドライウェイト(適正体重)、シャントの位置
•スマホも活用: 薬や処方せん、ストマ装具の箱の品番表示などの写真を撮っておく、お薬手帳アプリを入れておくのも効果的です。
3. 薬や医療用品・装具の予備を確保する
•内服薬やインスリン: 医師に相談して3日〜1週間程度多めに出してもらい、家に予備を置いておきましょう。
•ストマ用品(オストメイト): 常時使う装具に加え、1〜2週間分(最低でも5〜7セット程度)の予備を防災バッグに確保します。あわせて、はさみ、ウェットティッシュ(ノンアルコール)、ポリ袋、粘着剥離剤もセットにしておきます。
•腹膜透析(CAPD/APD)の方: 自宅に透析液や関連回路の備蓄(数日〜1週間分)を確保し、停電に備えて手動(CAPD)での注排水手順を確認しておきましょう。
4. 事前に主治医・通院先と相談しておくこと
•治療のタイミング: 1〜2週間遅れても問題ない治療か、日時を厳守すべき治療(人工透析など)かを確認しておきます。
•発熱時の対応: 熱が出た際に飲む薬(抗生物質など)の処方や対応方法を確認しておきましょう。
•代替受診先の確認: 通院先が被災した場合のバックアップ病院や連携先の相談窓口を確認しておきます。
5. 避難経路と移動方法の検討
•避難経路や緊急連絡先(家族、主治医、訪問看護師、透析施設、医療機器・ストマメーカー等)を見やすい場所に貼っておきます。
•自力移動が難しい場合は、移動に4人以上必要なこともあります。家族や近所の方、民生委員、市町村や保健所にあらかじめ相談・情報提供をしておきましょう。
Part 2:災害が発生した直後の対応
万が一、大きな揺れや被害が発生した場合は、落ち着いて次のように行動しましょう。
1. 情報収集と安否連絡
•テレビ、ラジオ、信頼できる機関のSNSやニュース配信等から正確な情報を集めます。
•あらかじめ決めておいた方法(SNSやショートメールなど)で家族や関係者に安否連絡をします。
•避難所や役所への連絡: 自宅で待機する場合でも、所在情報を近くの避難所に伝えておきましょう(取り残されを防ぐため)。避難所へ移動した場合は、自宅にメモを残しておきます。
2. お薬手帳・ストマ装具・持ち出しバッグを持って避難する
大規模災害時は病院を受診できない場合がありますが、処方せんや薬、保険証、現金がなくても、お薬手帳や薬袋を持参して保険薬局に行けば、薬を受け取ることができます。オストメイトの方は非常用ストマポーチを忘れずに持ち出しましょう。
Part 3:がん治療・抗がん剤を受けている方の注意点
1. 治療の中断・再開について
• 慌てずに生活を整える: 胃がん、肺がん、大腸がんなどの多くの抗がん剤治療は、1〜2週間程度遅れても病状が進行することはありません。まずは生活と安全の確保を優先してください。
• 例外(継続が必要ながん): 白血病など血液系のがんや胚細胞腫瘍、希少がんなどは治療の継続が必要です。必ず医療機関に相談してください。
• 飲み薬の抗がん剤: 手元にあり、体調が変わらなければそのまま服用を続けて構いません。
2. 普段の医療機関に連絡がつかないとき
地域にある「がん診療連携拠点病院の相談支援センター」へご相談ください。(Webサイト「がん情報サービス」などで探せます)
3. 避難生活での衛生・体調管理
• ガレキやヘドロの処理作業はしない: 治療中は抵抗力が下がっています。感染予防のため清掃作業などは避け、体を休めてください。
• 感染予防: マスク着用、手洗い、うがいを徹底します。
※水が不足している時は、少量の水で複数回うがいをする/アルコール消毒液を使う/水を使わずにタオルやティッシュで歯を拭くなどの工夫をしましょう。
• 脱水・血栓(エコノミークラス症候群)の予防: 水分をしっかり摂り、足を動かすストレッチや軽い運動をしましょう。
• 周囲に伝える: 避難所では「がんの治療中であること」を保健師や医療関係者に伝えると、衛生面などに配慮してもらえます。
4. 発熱・体調変化があったら
38.0度以上の発熱が続いたり、嘔吐・下痢、激しい痛み、傷口の腫れ、首のこわばりなどがある場合は、速やかに医療関係者に相談してください。事前に抗生物質を処方されている場合は内服します。
Part 4:医療用麻薬(痛みの飲み薬)を使用している方へ
がんの痛みや症状を和らげる「医療用麻薬」を使っている方も、落ち着いて対応しましょう。
• 薬の入手方法: 医療用麻薬は一般的なお薬です。被災時でも、多くの病院や薬局で受け取ることができます。万が一同じ薬がなくても、別の薬で代用する方法がありますので諦めずに相談してください。
• どうしても手に入らない時の応急処置: どうしても薬が手に入らない場合は、痛みがひどくならない範囲で「1回に飲む量」を少し減らして調整(例:3錠→2錠へ)してください。
※飲む「間隔」や「回数」は絶対に変えないでください(1日2回飲んでいたものを1回にするなどはNGです)。
Part 5:オストメイト(人工肛門・人工膀胱)の方の注意点
避難所生活では、水不足やプライバシーの確保が課題になります。事前に知識を持っておくことで対応しやすくなります。
1. 交換と衛生管理
• 断水時の対応: 装具交換の際、水が使えない場合はウェットティッシュ(ノンアルコール)や清拭剤で皮膚をやさしく拭き取ります。
• 装具が手に入らないとき: 普段と異なるメーカーやサイズの装具でも、穴をカットして調整すれば使用可能です。救護所の保健師や看護師に相談してください。日本オストミー協会等を通じて救援物資が届くこともあります。
2. 避難所での配慮の申し出
• 多目的トイレ・プライベート空間の確認: 避難所に到着したら、ストマ交換や廃棄ができる場所(多目的トイレや個室スペース)があるか救護所や本部に確認しましょう。
• ゴミの処理: 匂いが漏れない消臭袋や黒いポリ袋を準備しておき、廃棄方法について保健師等に相談しておくと安心です。
Part 6:人工透析(血液透析・腹膜透析)を受けている方の注意点
透析療法は維持管理が不可欠な治療です。災害時には「命を守るための迅速な行動」が求められます。
1. 血液透析(HD)の方の対応
• 透析ネットワークの活用: 被災によりいつものクリニックで透析が受けられない場合、自治体や日本透析医会の「災害時透析情報ネットワーク」等を通じて代替施設が案内されます。
• 連絡と受診: 避難所に入ったらすぐに「透析患者であること」を救護所や保健師に伝えてください。
• 食事・水分制限の徹底(重要): 透析が1〜2日遅れる可能性があります。カリウムや水分、塩分の摂りすぎには十分注意してください。
※生野菜、果物、ドライフルーツ、芋類、缶詰の汁などはカリウムが多く含まれるため避けるか控えめにします。
2. 腹膜透析(CAPD/APD)の方の対応
• 清潔な操作スペースの確保: 注排水やカテーテル管理の際は、感染(腹膜炎)を防ぐため風やホコリの少ない場所(個室や救護所など)を確保します。
• 衛生保持: 水が十分に使えない場合も、手指のアルコール消毒を徹底してください。
• 停電時の対応: 自動腹膜透析(APD)機器が使えない場合は、手動(CAPD)へ切り替えて注排水を行います。

まとめ:日頃のコミュニケーションが最大の防御
災害時は医療機関側も停電や交通網の断絶により、思うような診療ができない状態(BCP=業務継続計画の発動など)に陥ることがあります。
だからこそ、平時のうちに「主治医や訪問看護師、透析スタッフと非常時の対応を話し合っておくこと」「近所や自治体に体調や必要なケアのことを共有しておくこと」が大切です。
「最悪の事態に備え、最良の計画を立てる(Prepare for the Worst, Plan for the Best)」。
ぜひ、今日からできる一歩(お薬手帳の整理、ストマ用品の確認、モバイルバッテリーの準備など)から始めてみてくださいね。

主な参考文献・典拠資料
•国立がん研究センター がん情報サービス
「がん患者さんのための災害への備えと対応に関する情報」
「大規模災害に対する備え:がん治療・在宅医療・緩和ケアを受けている患者さんとご家族へ」
•公益社団法人 日本オストミー協会
「オストメイトの災害対策・防災ガイド」
•一般社団法人 日本透析医学会 / 社団法人 日本透析医会
「透析患者の災害対策マニュアル・災害時生活ガイド」
•厚生労働省 委託事業(在宅医療の災害時における医療提供体制強化支援事業)
『BCP 策定の手引き ~Prepare for the Worst, Plan for the Best~』
『在宅医療・ケア提供機関を対象とした Business Continuity Plan(事業継続計画)策定支援研修』資料
•厚生労働省
「エコノミークラス症候群の予防のために」