- 8月 13, 2026
- 8月 19, 2026
【災害×介護】避難所で認知症の方を守る5つのケアルールと杉並区「福祉救援所」活用術
地震や豪雨などの大規模災害が発生した際、認知症の方とそのご家族は大変大きな試練に直面します。
見知らぬ環境、人混み、激しい騒音……。環境の変化に敏感な認知症の方にとって、避難所生活は強い不安や混乱をもたらし、症状の悪化や「BPSD(行動・心理症状)」を引き起こすきっかけになりがちです。
今回は、厚生労働省の「避難所での認知症の人と家族支援ガイド」 や 日本認知症学会の「被災した認知症の人と家族の支援マニュアル」 などの指針をもとに、避難所で知っておきたいケアのポイントと、杉並区の「福祉救援所(福祉避難所)」制度を活用した具体的な備えについて分かりやすく解説します。
1. なぜ避難所で認知症症状が悪化しやすいのか?
認知症の方は「場所」や「時間」の感覚(見当識)を保つことが難しいため、非常時の混乱した状況を正しく把握することができません。
•音や人の視線による刺激
•日常のルーティンの途絶(食事や睡眠のリズムの乱れ)
•「迷惑をかけているのでは」という介護家族の強いストレス
これらが重なることで、徘徊や大声、激しい不安や興奮が生じやすくなります。しかし、周りの「ちょっとした理解と配慮」があれば、本人も家族も格段に過ごしやすくなります。
2. 厚生労働省・学会が推奨する「避難所でのケア」5つのコツ
ガイドライン等で強調されている、避難所現場での具体的な対応ポイントです。
① 静かな環境と「個の空間」を確保する
避難所の出入口近くは人の出入りが多く、ザワザワとして興奮を招きやすい場所です。できるだけ体育館の奥まった場所や隅のエリアを確保しましょう。
段ボールベッドやパーテーション、毛布などで囲いを作り、「視線や刺激を遮る空間」を整えることが安心につながります。
② 「驚かせない・急がせない」声掛け
慌ただしい雰囲気は本人に伝染します。声をかける時は、一呼吸置いてから、視線を合わせてゆっくり・短く伝えます。
正論で間違いを正したり、感情的に叱ったりするのは厳禁です。本人の不安な気持ちに共感し、「大丈夫ですよ」「ここにいますよ」と繰り返し安心感を与えましょう。
③ できる範囲で「いつものリズム」と「役割」を作る
非日常の中でも、日中は光を浴びて少し体を動かし、夜は休むといったメリハリ(生活リズム)を意識します。
また、「タオルをたたむ」「ゴミをまとめる」など、小さな役割をお願いするのも効果的です。誰かの役に立っている感覚(尊厳)が、心の安定をもたらします。
④ 「なじみの品」を活用する
普段から使い慣れているブランケット、愛用のコップ、お気に入りの音楽や写真など、身近にあるだけでホッとする「なじみの品」をそばに置いておきましょう。
⑤ 周囲に状況を伝え、一人で抱え込まない
介護家族は「周りに迷惑をかけられない」と孤立しがちです。
避難所の運営者や周囲の避難者に「認知症があること」をあらかじめ伝えておき、見守りや協力のネットワークを作ることが大切です。
3. 杉並区での避難先と「福祉救援所」の仕組み
一般の避難所(小学校・中学校などの震災救援所)での生活が困難な高齢者や障害者のために、自治体では二次的な避難場所が用意されています。
ここ杉並区では、いわゆる「福祉避難所」のことを「福祉救援所」と呼んでいます。
◆杉並区の福祉救援所とは?
区内の特別養護老人ホームなどの高齢者福祉施設や障害者施設が、災害時に「福祉救援所」として開設されます。
一般的な救援所(小中学校等)では生活の維持が難しく、介護や専門的な配慮が必要な方が移動して保護を受けるための施設です。
◆どうすれば利用できる?(重要ポイント)
発災直後、最初から福祉救援所に直接避難することは原則できません。
まずは地域の「震災救援所(近隣の小中学校など)」へ避難・受付を行います。そこで保健師や医療チーム、ケアマネジャー等が状況を確認し、必要性が認められた場合に福祉救援所への移動・調整が行われる仕組みになっています。
4. 平時(今すぐ)からできる備え
災害が起きてから慌てないために、普段から以下の準備を進めておきましょう。
1.SOSヘルプカード・服への名札付け
名前、緊急連絡先、かかりつけ医、認知症の状況や接し方の注意点を書いたカードを準備し、バッグやポケットに入れておきます。服の裏地に名前を記しておくのも有効です。
2.お薬手帳のコピーと非常持ち出し袋の準備
服用中の薬がわからなくなると処方に時間がかかります。最新のお薬手帳のコピーや主治医の連絡先は常に持ち出せるようにしましょう。
3.地域包括支援センター(ケア24)への相談
杉並区の地域包括支援センター(ケア24)や担当ケアマネジャーと相談し、「避難行動要支援者名簿」への登録や「個別避難計画」の作成を進めておきましょう。

まとめ: 温かい眼差しと、専門職・制度への早期アクセスを
認知症の方を介護されているご家族にとって、被災時の不安は想像を絶するものがあります。
しかし、避難所においては「完璧に介護しよう」と気負う必要はありません。周囲の温かい声掛けや支援者へのSOS、そして杉並区の福祉救援所のような制度をしっかり頼ることが、本人と家族の心身を守る第一歩となります。
日頃からの小さな備えと地域とのつながりを、ぜひ今日から意識してみてください。
引用・参考文献
1.厚生労働省 / 認知症介護研究・研修センター
『被災した認知症の人と家族の支援マニュアル <介護用 詳細版>』
『避難所での認知症の人と家族支援ガイド』
2.一般社団法人 日本認知症学会
『被災した認知症の人と家族への支援マニュアル』
3.杉並区 公式ホームページ
『震災救援所と福祉救援所制度について』
『避難行動要支援者支援制度・ケア24(地域包括支援センター)のご案内』
