• 7月 17, 2026

いつまでも元気に!高齢者のための栄養管理と食事のコツ

 高齢期を健やかに過ごすためには、日々の「栄養管理」と「身体活動(運動)」が欠かせません。 食欲が落ちて食べる量が減ると、筋肉量が減減少し、さらに活動量が落ちるという「低栄養の負の循環」に陥りやすくなります。

 今回は、この悪循環を断ち切り、毎日を元気に過ごすための具体的なポイントを分かりやすくご紹介します!

1. 「低栄養の負の循環」を断ち切るには?

 食欲低下から始まる低栄養は、基礎代謝の低下や身体機能の衰えを招き、さらなる食欲不振を引き起こします。これを防ぐカギは、「まめに食べて、まめに動く」ことです。
 まずは、健康を維持するための「目安」を知ることから始めましょう。

 •目標とするBMI 65歳以上の方の目標BMIの範囲は 21.5〜24.9 とされています。太りすぎだけでなく、痩せすぎにも注意が必要です。
 •理想的な歩行習慣 週に1〜2日でも「1日8,000歩以上」歩く習慣がある人は、全く歩かない人に比べて全死亡リスクが低いというデータもあります。

◇外出や歩行が難しい方は… 「歩けないから」と諦める必要はありません。家の中で特定の筋肉を意識して動かすだけでも、十分に負の循環を断ち切り、代謝を維持することが可能です。

2. 家の中でできる!狙うべき「リハビリ運動」

 高齢になると、特に筋力が低下しやすい筋肉(相動筋)があります。家の中で座ったまま、あるいは手すりを持って、以下の筋肉を意識的に動かしてみましょう。

•足の筋肉(転倒防止・歩行の維持に)
 oすね(前脛骨筋): 座ったまま足首を手前に曲げる(つま先を上げる)運動。
 o太もも(内側・外側広筋): 椅子に座った状態で、膝をゆっくりと真っ直ぐ伸ばす運動。
 oお尻(大殿筋など): 座ったままお尻に力を入れる、または手すりを持って立ち座りを繰り返す運動。

•体幹の筋肉(姿勢の維持に)
 oお腹周り(腹横筋・腹直筋など): 背筋を伸ばして座った姿勢を保つ、または深呼吸をしっかり行うだけでも刺激になります。

•上半身の筋肉
o腕を伸ばす筋肉(上肢伸筋群): 物を支えたり、立ち上がったりするときに大切です。

3. 意識して摂りたい!3つの重要栄養素

 せっかく体を動かしても、栄養が足りなければ逆効果になってしまうことも。特に高齢期に不足しがちな栄養素を意識して摂りましょう。

① たんぱく質(筋肉の維持や免疫に)
 筋肉量を維持するために、1日あたりの目安量を意識しましょう。
 •目安量: 男性は1日 60g、女性は1日 50g
 •おすすめ食材: 鶏むね肉、魚(鮭など)、卵、大豆製品(納豆や豆腐)を上手に組み合わせましょう。

② 亜鉛(味覚の維持に)
 不足すると「味が分かりにくい」といった味覚障害の原因になります。
 •おすすめ食材: 牡蠣、レバー、赤身の肉など。
 •工夫のコツ: クエン酸やビタミンC(レモンなど)と一緒に摂ると、体への吸収率が高まります。

③ 食物繊維(便秘の予防に)
 すっきりとしたお通じを保つための目標量です。
 •目標量: 男性は1日 20g以上、女性は1日 17g以上

◇外出が少ない日の必要エネルギー(カロリー)の目安 ほとんど外出しない日であっても、生命を維持するために以下のエネルギーが必要です(身体活動レベルIの場合)。

 •75歳以上・男性: 約 1,800kcal(※活動量が普通の人は2,100kcal)
 •75歳以上・女性: 約 1,400kcal

4. お腹の調子を整える「低FODMAP食」という選択肢

 「お腹がゴロゴロ鳴る」「腹痛や下痢が続く」など、腸が過敏な方には「低FODMAP(フォドマップ)食」という選択肢があります。これは、小腸で吸収されにくい特定の糖質(FODMAP)を控える食事法です。

 •避けたほうがよいもの(高FODMAP) 小麦、うどん、たまねぎ、牛乳、リンゴ など
 •おすすめのもの(低FODMAP) 白米、玄米、米粉、バナナ、じゃがいも、人参 など

5. 食事を楽しむ・安全に食べるための工夫

 「何を食べるか」と同じくらい「どう食べるか」も、食欲や健康を維持するために大切です。

◇五感をフルに活用する

 年齢とともに味覚が低下していると感じる時は、工夫で補いましょう。

 •視覚・嗅覚: 明るい部屋で食事をする(視覚)、お出汁やスパイス、焼きたてのパンの香りを引き立てる(嗅覚)。
 •温度: 味が感じにくい時は、人肌くらいの温度にすると食べやすいと感じる方が多いようです。

◇ 誤嚥(ごえん)を防ぐ!食事介助の基本「FASS」10項目

 食事介助が必要な場合は、安全・スムーズに食べるための技術指標である「FASS(ファス)」の10の基本項目を意識しましょう。

【1〜3:姿勢を整える】
1.身体が左右に傾かないようにする: 体が傾いていると、食べ物を喉へまっすぐ送り込めず誤嚥のリスクが上がります。
2.足底(足の裏)を床につける: 足底が床にしっかりつくことで、姿勢が安定し、しっかり噛み込めるようになります。
3.あごを軽く引く(軽度前屈位): あごが上がると気道が広がってしまいます。軽くおじぎをしたような姿勢が、最も誤嚥しにくい安全な角度です。

【4:食事前の状態確認】
4.のどのゴロゴロ(唾液や痰の貯留)がないか確認する: 食事開始前に声をかけてもらい、声がガラついていないかチェックします。

【5〜10:介助の技術と配慮】
5.食べる人の見える位置で食事をすくう: 突然スプーンが口元に現れると驚いてしまいます。安心感を持ってもらうことが大切です。
6.正面からの介助は避ける: 右側から介助するときは右手、左側のときは左手でスプーンを持ち、横から無理に差し込まないようにします。
7.あごが上がらないようにスプーンを口に入れる: 目線より低い位置から、水平にスプーンを差し込みます。
8.上唇に擦るようにスプーンを引き抜く: 口の中に食べ物を残さないよう、上唇を少し巻き込むようにして水平にまっすぐ引き抜きます。
9.食べているものを目で確認してもらう: 「次はお野菜ですよ」など、何を食べるか視覚で認識してもらうことで、唾液の分泌などを促します。
10.一口のペースを乱さない: しっかりと飲み込んだのを確認(または本人の合図を確認)してから、次の一口をスプーンにすくいます。

◇脱水と誤嚥を防ぐその他のヒント

 •水先注入(すいさきちゅうにゅう): 経管栄養などを行っている場合、栄養剤の前に水分を注入することで、胃の滞留時間が短くなり、逆流性誤嚥のリスク低減が期待できます。
 •口腔ケアの工夫: お口が乾くときは米油やMCTオイルで潤し、唾液の粘度を下げたいときはレモン水などのビタミンCを活用するのも手です。

まとめ

 高齢者の栄養管理は、一人ひとりの体調や好みに合わせて「楽しく、おいしく、しっかり食べる」ことが基本です。
 歩くことが難しくても、お家の中で筋肉を少しずつ動かすことと、適切な栄養摂取、そして安全な介助を組み合わせれば、健康寿命をしっかりと延ばすことができます。 まずは今日から、一品たんぱく質を増やしたり、座ったままつま先を上げてみたりすることから始めてみませんか?

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